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電気料金の最高値更新 ―ロシア・ウクライナ戦争が日本のエネルギー安全保障に与える影響

2022年09月12日   5560

電気料金の最高値更新 ―ロシア・ウクライナ戦争が日本のエネルギー安全保障に与える影響

1.日本の電気料金、過去5年間で最高水準に

 

 日本では、ここ数か月の電気代がだんだんと高くなってきている。日本の大手電力会社10社の今年5月の家庭用電気料金は、過去5年間で最も高い水準となった。このうち、東京電力の値上げ率が最も高く、5月の東電管内の一般家庭の電気料金の平均は4月と比べて146円(約7.31人民元)上昇した。

 

 アジア諸国の中で、もともと割高だった日本の電気料金は、今回の値上げで、国民の生活コストのさらなる上昇を招くだろう。このような、日本の電気料金値上げの原因は一体どこにあるだろうか。

 

 日本メディアは、今回の電気料金の値上げには、3月に発生したM7.4の地震と最近の円安が大きく関係しているが、最も直接的な原因はロシア・ウクライナ戦争によるLPガス(液化石油ガス)と石炭の輸入価格の上昇にあるとの見解を示している。

 

2.ロシア・ウクライナ情勢が日本のエネルギー供給に与える影響

 

 世界のLNG(液化天然ガス)のスポット価格は今年に入って一時、前年同期の10倍以上に高騰した。日本の電力は火力発電に大きく依存しているため、天然ガスや石炭価格の上昇は、必然的に電気料金の上昇をもたらす。

 

 日本の大手電力会社は、発電に必要な天然ガスの約8割を長期契約で調達しており、スポット価額の上昇であまり衝撃を受けていなかったが、大きなコストの上昇圧力にさらされているのも事実である。そのため、今後、日本の電気料金の高止まりがますます深刻になると予想される。

 

 日本の天然ガス供給に関して、今年2月、英石油大手シェルがロシアのウクライナに対する軍事行動を受けて、世界最大の天然ガス採掘企業ガスプロム(gazprom)との提携解消を発表した。この提携には、サハリン島から日本への天然ガス供給プロジェクトが含まれているが、現在、日本の輸入天然ガスのうち約9%をこのサハリン島から輸入している。

 

 石油供給に関しても、米石油大手エクソンモービルは3月、日本政府と丸紅や伊藤忠商事などの民間資本が約30%の権益を保有するサハリン島にある石油開発事業の操業停止と、ロシアへの新規投資の停止を発表した。

 

 石炭供給に関しては、政府は4月、ロシア産石炭の輸入を禁止する追加制裁を発動するとともに、ロシアへのエネルギー依存度を段階的に引き下げる方針を発表した。

 

3.ロシア・ウクライナ紛争で日本国内の原発は復活するのか

 

 今回の国際情勢の変化の影響を受けて、日本国内では、石油や天然ガス、さらには電気の安定供給が再び不安視されている。

 

 昨年発表されたエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを最優先で取り組み、再生可能エネルギー発電に占める太陽光発電の割合を14~16%に上げ、日本の再生可能エネルギーの中核的な「担い手」にする方針が初めて示された。

 

 再生可能エネルギーは日本の自給エネルギーの一部として考えられる。しかし、再生可能エネルギー発電には「天候に左右される」という弱点が残っている以上、電気安定供給問題の完全解決には繋がらないだろう。今年3月の震災後、東電の火力発電所が稼働を停止した。そのような状況下でこそ太陽光発電が大いに活躍するはずだったが、3月末の冷え込みと降雪の影響でその発電量が大幅に減少してしまった。今回の電力供給危機で露呈した日本エネルギー構成の脆弱さと電力供給体制の脆弱さを目の当たりにして、原発再稼働を求める声が再び上がった。

 

 今年2月、各分野の専門家が集まった経済産業省主催の原子力小委員会の定例会議で、多くの専門家は、日本のエネルギー安全保障の観点から、原子力発電の比率をさらに高めるべきだと主張した。慶應義塾大学の遠藤典子特任教授は、「日本はエネルギー自給率の低い国であり、その置かれている立場は非常に厳しい」、ロシア・ウクライナ情勢の変化だけでも電気料金がこんなに変動する日本は、「ウクライナ問題だけでなく、米中対立を背景にした台湾問題など、多大なる影響を受ける状況下にある」と指摘した。

 

 さらに、遠藤特任教授は、フランスが2050年までに原発を14基新設する方針を示していると紹介した上で、日本の昨年新たに発表されたエネルギー基本計画には、既存の原発を再稼働させようとする目標すら盛り込まれていない状況を、「思考停止状態に陥っている」と指摘し、原発政策の見直しを促した。

 

 これに対しては、原発は戦時中に軍事標的になりやすく、原発開発に力を入れることは日本のエネルギー安全保障にとっては最善の選択肢ではないとする専門家の意見もあった。

 

4.日本はロシアへのエネルギー依存から脱却できるか

 

 昨年、日本はLNG輸入量の約8.8%、石炭輸入量の約12.5%をロシアから調達した。そのため、日本は今回のロシア制裁でダメージを受けるリスクもあるように思える。

 

 日本政府はこれまで、自国のエネルギー自給率の向上とエネルギー調達の安定化に向けて努力してきた。昨年閣議決定されたエネルギー基本計画でも、石油・天然ガスの自主開発比率を2019年度の34.7%から2040年度までに60%以上に引き上げる目標が掲げられている。

 

 今年1月に、国際石油開発株式会社(INPEX)と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、島根・山口両県沖で海洋ガス田の探鉱を3月から始めると発表した。日本国内での海洋ガス田の新規探鉱・開発は約30年ぶりである。

 

 現在、日露協力の下で、2つのLNGプロジェクト、サハリン1とサハリン2の建設が推進されている。このうち、サハリン2が生産開始すれば、年間最小で1000万トンの液化天然ガスが出荷される見込みで、そのうち約60%が日本に輸出されるとのこと。日本政府が今後、ロシア産LNGの輸入を禁止し、サハリン1・サハリン2プロジェクトから撤退すれば、日本のLNG輸入コストは年間で少なくとも3分の1上昇すると予測されている。

 

 昨年、日本が輸入したLNGの総額は4.3兆円に上り、ロシアとの連携プロジェクト、サハリン2は3000億円に達する。LNGのスポット取引でサハリン2の不足分を埋めようとするなら、日本のLNG年間輸入金額は35%上昇し、5.8兆円に達すると推計されている。そうなれば、日本の電力消費者はさらに高い料金を負担することになるだろう。

 

 政府は、低価格で長期安定的な天然ガスの調達ができるよう、日本のエネルギー安全保障にとって極めて重要なロシアとのLNGプロジェクトを手放さずに、他にも安定的で低価格なエネルギー供給源を求め、エネルギー輸入先の多様化を図ると表明している。

 

 政府は現在、地政学的リスクに左右されない日本国内の資源開発を重要視したエネルギーの安定確保に躍起となっているが、実際には、資源の乏しい日本には、エネルギーの完全自給自足は難しいとされている。更に、日本が遠回りして中東、欧米からのエネルギー輸入量を増やせば、エネルギー価格の輸送コストも増加してしまうため、仮にその方法でエネルギー供給の安定性が改善されたとしても、エネルギー価格や電気料金高騰などの問題は解決されないだろう。そのようなことから、電気料金を抑えようとするならば、日本は当面、ロシアへのエネルギー依存から脱却することは難しいと考えられるだろう。

 

(記者 鈴木 卓哉 編集 尾崎 和明 校閲 石井 美香)

 


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